別れの日。
梓ゆい

49日の晩
家のあちらこちらで
父の気配がする。

(ぎしっ・・・・。ぎしっ・・・・。)と
鳴り響く階段と
広い縁側。

家中の壁を撫でまわし
目を細めながら歩き回る姿が
脳裏に浮かぶ。

顔を覗かれて
頭を撫でられたと錯覚を覚えた直後
(じゃりっ・・・・。じゃりっ・・・・。)と
音を立てた庭一面の石畳み。

黙って去り行く父は
きっと一人で泣くのだろう。

もうすぐ開く
母が植えた赤いチューリップ。
それを一本
手に取って。


自由詩 別れの日。 Copyright 梓ゆい 2018-10-25 22:09:35
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