箱のなかみ
服部 剛

君があまりに軽やかな足どりで
振り返る笑顔だけをのこして去ってからというもの
ふいに さびしくなり
しばらく忘れていた「 切なさ 」が
僕の体ごと ソーダ水の緑に染めあげて
炭酸の小さい泡が
ひりひりと体のふしぶしではじけている

南の風に吹かれてやってきた旅人よ
君の瞳の内に住む「 こども 」が
無意識に じっ とみつめると
ひとりでに胸に穴が空いてしまう

ソーダ水のはじける泡が
胸の穴からぴりぴりとこぼれぬよう
人さし指を穴に突っこんだまま ぼぉー っと立ち
君のいる遠い夜空を 見上げている

大人になるにつれて
「さびしさ」は少しはにかんだ表情で
いつも隣にいる姿のない友達になっていたけれど

今夜はひろげた手にのせた
あふれんばかりの「 星ノ言葉 」を握って
君のいる遠い夜空の下に思い切って投げよう

「 誕生日、おめでとう。
  君が微笑みに包まれますように 」

もう昔のように闇雲に
「君が欲しい」とは言わない

もし君に手わたしできるプレゼントがあるなら
それは
ぎこちなくへこんだハート型の箱を包んで
中に入れておいた一枚の絵葉書

ひまわりの傍らに

たった ひとことの 言ノ葉を えて 




自由詩 箱のなかみ Copyright 服部 剛 2005-03-26 00:30:07
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