水宮うみ

ある日、ぼくは夜の町へと逃げだした。
夜の静けさのなかで、色々なことを考えた。生きる意味とか。このしんどさはどうすればなくなるのかとか。
あの頃のぼくは、とてもしんどかった。とてもつらかった。この世からいなくなりたいってずっと思っていた。
夜はぼくを、怒鳴ることも笑うこともしなかった。
夜は、ぼくに寄り添ってくれた。冷たい風で熱をさらっていってくれた。
夜は、ぼくの悩みに応えてくれた。静かに言葉を受け止めてくれた。
ぼくは、あの日の夜の優しさを、忘れることはないだろう。
いつかぼくの周りで悩んでいる人がいたら、あのときの無口でクールな夜みたいに、その人の力になれたらいいなと思う。


自由詩Copyright 水宮うみ 2018-10-18 20:59:49
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