親愛なる虚像たち
青花みち

いびつに切り貼りされた現実の、ぺらとぺらのすきまにきみはしがみついていた。きみの顔をのぞくこの瞳はさながら怪物に見えるだろうか。差し出した爪の先を巨大な肉切り包丁とたがえるだろうか。鏡なんて当てにならないからすべてすべて割って回った。結局そこに映るのはわたしから見たわたしでしかないこと、とうに思い知っている。洗面所に落ちた破片、白い布で丁寧に拭いた。きみが怪我をしないようにやすりをかけてあげるから、怯えた目をまばたきで隠して。優しさをブローチにして飾れたらよかったのに。破片から作った銀色のブローチ。きみの目に映り込むは鏡の中のわたし。真実かどうか定かでない現実から手を離してくださいと、誘い水。冠水した洗面所の夢にて。


自由詩 親愛なる虚像たち Copyright 青花みち 2018-10-17 20:38:07
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