草たけてもえて
松岡宮

隣の空き家を包む枝葉がいよいよ油断できない分量となって、夏。
駅員たちは乗客の筋肉にネクタイを掴まれて、ぐぅ、やられる、夏。
患者たちは医者を囲んで糾弾する、ために、集まり、夏。
気温の上昇とともによく育ち蔓をあちこちへと伸ばして、草。
油断をして歩いていたら足を取られて転んで

だん。

しまった。

草は怒っていたのだった。

ハクビシンとアライグマにご注意ください、区報の警告。
気づけば背丈を追い越していた、ケアされないままの、草。
みんなでしぜんをまもりましょう、そんな看板は草に隠れてもう見えない。
枝葉は隣の空き家を取り囲み次の地震で倒れる予定、だん。
駅員は乗客の筋肉によってしばらく入院する予定、だん。
その日の患者会は大きな盛り上がりを見せたそうです、頑張るぞ、おう。

だん、だん。

油断をしてしまったのだ。

転んだままの低い姿勢でごめんなさい許してくださいと言うだけだった。

草たけてもえて
草たけてもえて
あたりは炎に包まれあっという間に延焼し、
わたしの体は黒焦げになってしまった。
だからここから先は死後の話となりますが、焼け野原となったその町内では
「大丈夫ですよ。頑張るぞ、おう。」
「そう、日本は何もないところからここまで発展してきたのですから。」
との声、声、声。

なんだ 
みんな
やけに明るいじゃないか。


自由詩 草たけてもえて Copyright 松岡宮 2018-10-16 22:03:42
notebook Home 戻る  過去 未来