もう一度笑って、もう一度笑って
竜門勇気


僕は責任逃れのために
何度も嘘をついた
巧妙ではなかったけど
バレないように知恵を使って

きれいな言葉を沢山知っていたから
たくさん汚く使った
そのうち無くなっちまうさ
汚れてないもんなんてどこにもな

責任は手元をすり抜けていった
小さな穴をいっぱい残して
ふらふらしながら世界を歩く
きれいな言葉はまだある
言い訳のできないことなんて
そう多くはないさ

もう一度笑って、もう一度
笑えない嘘を言ったんだ
そんなのこっちの勝手だからな
もう一度笑って、もう一度笑って
つきあえないのさ
笑えない嘘を壊すのなんて簡単さ

ビルの間にたくさん
廃屋の壊れた窓にもたくさん
小さな穴からこぼれた
取り返しのつかないものが
濡らしていく影が
深く染み込んでいる

すくえねえすくえねえ
こぼれてこぼれて
口元までもってけねえ
一度捨てたら
餓鬼道さ

こぼれてのがれて
口で燃える
もう一度笑って、もう一度
笑って、もう一度こっち見て

知らない町で古い家に囲まれた
用水路を覗き込んで浅い流れを見る
水草が何度流れても
すくえねえすくえねえ

僕は責任逃れのためなら
どんな嘘でも使ったよ
きれいな言葉は僕を裏切らない
汚しても穢しても壊れねぇ
あーこんな強度で生き延びてるのさ

きれいな言葉
何だ、汚れないね
もう一度笑って、もう一度笑って
壊しきるまで試すよ
汚しきるまで汚すよ
もう一度笑って、もう一度笑って

君が笑ってる限り僕も笑ってられる

何もすくえない僕でも君がいれば笑って生きてられる


自由詩 もう一度笑って、もう一度笑って Copyright 竜門勇気 2018-10-14 03:32:06
notebook Home 戻る  過去 未来