穩野間(のんのげん)から底山(のやま)町へ
竜門勇気

穩野間(のんのげん)から底山(のやま)町への語句解説。
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「浜鬘」 地名。町内会でのみこしに無限軌道が採用されていることで有名。著名な土産物としてはまかづらがある。アメジストに似た鉱石が産出する。成分表にするとケイ素などありふれたもので構成されており、その色合いは構造色であるとされる。はまかづらはそれを磨いた小さな手鏡。

「六十兵」 地名。浜鬘の隣接地でかつて合併案が出たが住民間の仲が良すぎたため「互いの街に行き来する楽しみが消えるのは損失だ」という理由で立ち消えた。銘菓”りくへいもち”は時々都会で大ヒット。

「咎戸」 地名。特殊な飛び地として有名。道幅2.5m、全長7kmの町道を6箇所国道が横切る。国道は便宜上隣接町のどちらかに定義されており、7つの分断された点線のような形をしている。モールス信号で読む事もできるという。

「三好」 ぼんぼりに似た祭具。死者が出た家に飾る。またはそれを作る職能の店。

「穩野間」 地名。浜鬘を中心に使われる葬儀場を中心にしたある地域。

「ローソンと蒲越があるとこ」 穩野間と咎戸の農道が交わる道のあたり。

「穩野間さん」 咎戸の祭神。一人翻って回らずとも回る神。神無月におらず神有にもおらず。多面で膝は肥沃。捧げる麦は搗いてはならない。辻で会っても畏怖してはならない。穢れない場所にも、穢れない場所にも収受を経ず祟種を植える。紫の石があれば鏡にして持てば良い。なければ金の羽、鏨の貝殻、逆巻きの溝で良い。起こっておればわろし。帰らず、持たず、乞うようにして食うこと。

「泉籠」 地名。穩野間の中程。

「李餅」 彼岸花の球根と長芋のムカゴの餅。蒸したそれらをすり鉢と沢の石で擦ったものを川べりで洗い、残ったデンプンを焼いたもの。食用にはせず、枕団子として供える。しばしば、かつてそこにあった営みは消えた、として棟上げで投げられる。独特の淡いきゅうりのような匂いがする。

「汽車砲の西」 地名。三好を作る際に使われる麻竹はここ以外のものは使われない。汽車砲の北では特にアルコール依存症の罹患率が高い地域とされる。

「鉄首町」 地名。この町は誰にも鉄首とは呼ばれない。鉄首は諱、鉄首は忌み言葉。李餅をいくつ重ねようか。いくつ口にしようか。不浄のもんをば通せんぼしようか。鉄首が李餅のもとのもと。もとのもとのならくちにはするな。このわらべうたは隣接する地域のみならずあらゆる音楽的バックボーンが発見できない。

「濃月の祭り」 祭事。祭りをすべきときにしないとき、すべきときするべきだった人が浮かべる残響。抽象的な、概念としての祭りが存在の不証明としてあらわれる輪郭、その内部を知覚したときに感じる雰囲気の総称。ときには満腹になるまで詰め込まれる屋台の飲食物として存在する。

「徳の衆」 穩野間さんの指。

「沼方に入って盃にはいっ」 沼方(地域)の一部は道路としての沼地が生きている。盃はこの沼の中の澄んだ水のこと。禊に使われた過去から受けたばかりの祟、汚辱を漱ぐのに良いとされる。

「替え文」 以前もらった手紙の文字をアナグラムで別の手紙にすること。送る相手は最初に送った相手にすること。でなければ一度自分の家に送ったあと、柿の木の枝に日桑の枝で起こした火をつけて燃やす。

「底山町」 地名。穩野間のすぐ外。畜産家の土地でほぼ全域を占められており、山間部では漆が名産となっている。

「二間さんと三間者の熊縁」 二間は二仏中間、三間者は三人の間者、この2つの間には熊の縁があるとされる。熊は待ち人を待たぬのが縁であって会ったものは縁がない。転じて、誰にも止められず誰のものでもない悪縁がもたらす災厄のこと。火のないところに煙が立つ、ような意味。

「猿の風邪」 ペストのこと。


散文(批評随筆小説等) 穩野間(のんのげん)から底山(のやま)町へ Copyright 竜門勇気 2018-10-11 00:09:48
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