永き静けさ
木立 悟






左目の時間は遅くなり
右目は知らぬふりをする
雪になれない雨の日々
径に生える短いまぼろし


冷たい水のかたちたち
好きと同時に嫌いながら
指の数を限りなく
限りなく限りなく増しながら


遠い遠い感謝と返歌
爪 髪 皮 息
無いようで有る色の渦に
挿し入れられる那由他の音


海と陸地の残酷な取り決め
時間も生命も希望も裏切り
消えては現われ 現われては消え
何も無い風の世紀がただ横たわる


それでも
そうだとわかっていても
光はやわらかな網を編み
人は刻むことを止めない


こぼれ落ちるもの
昇りゆくものに
怒り悲しみ笑う日々
様々に分かれ断たれ 隣り合いながら


積もった埃に視線で絵を描き
壁の紙魚を繋いで地図を書く
繰り返す嵐にちぎれちぎられ
数億年の波の下に置かれても


どこまでも今日の目は今日を見て
仕方の無い痛みに閉じられてゆく
灯に照らされ現われる足跡に
降りつづく羽を憶えながら


























自由詩 永き静けさ Copyright 木立 悟 2018-10-07 09:56:42縦
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