ゆるせないくらいに空は蒼くて
こたきひろし

最初の子供は死産だった
最初の嫁も死んだ

二番目の嫁は五人の子供を産んだ
一番目の子供はおんなで二番目はおとこ
三番目と四番目は年子でふたりは共におんなだった
五番目はおとこでそれで〆にした

二番目の嫁は小柄な体をしていた
戦争から生きたまま帰ってきたおとこはその分精力絶倫だったのかもわからない
二番目の嫁は避妊をさせて貰えなかったに違いない
五人の子供を産んだが五人分の愛情を孕んでいたかは怪しい

戦場には血生臭いノイズが走る
おとこはその度胸をためされて捕虜を銃剣で突いた時に不覚にも射精してしまった
冷たい心で無慈悲に敵を殺す訓練

その時荒野の空に肉食の鳥たちば円を描いていた
死んだ肉が食いたかったのだ
おとこは故郷に無事に生還したら
戦争が終わったら
その時に密かに決意した
自分が殺した分をおんなに孕ませてやると

目を上げて見上げた空はゆるせないくらいに蒼かった


自由詩 ゆるせないくらいに空は蒼くて Copyright こたきひろし 2018-10-02 00:18:59
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