秋についてのノート
中田満帆

秋についてのノート

 小麦色の秋よ
 その綴り方よ
 やがてざっくりと鎌に剪られ、
 失われていくものたちよ
 天井の滴りを数え
 バス・ルームへむかうぼくよ
 そしてアイオワの果てで荒野する何千人もの青年たちよ
 かれらの憂い、うごかせないままに死する天使たちの電気冷蔵庫よ
 わがままに歩き、貞淑に殺され、いまもって分解されない雷のなかで
 16番街は消費しつづける女たちの紙細工なのだ
 わかるか!
 たったいま秋は愛撫するおれたちを霧として町として岩として
 あらゆる経験が煩悶するあたらしい河のほとり
 いったいだれのためにぼくは秋になるのか
 いったいどれほどの秋がぼくに変身してきたというのだろうか
 やさしいお姉さん!──あなたはいつバス・ルームへむかうんだ
 そして潰瘍色のベッドのうえでいつあの男と交わろうというんだ?
 教えてくれ、
 そして否定してくれ
 町から町へ消える女たち、
 ボクシングのリングで饂飩を喰い、蕎麦を啜る、
 日本語がいかにいんちきかをぼく自身に教授してくれ
 秋、
 また秋
 そして秋
 やがて秋
 ふたたび秋
 どうやっても秋
 いついつまでも秋
 姫君のような秋
 ぼくは天国では眠れない
 ぼくはずっと地獄にいたい
 そこで火やぶりにされながら
 かつて愛してたものを憎みたい
 なにが未来だ、なにが将来だ
 そんなものはぜんぶ秋になっちまえ!
 天籟は枯れ、その飛沫は地を覆い、
 肥沃な土地を、痩せこけたぼくに寄越せ、──秋め!


雨についてのノート


 世界はいまだ長い雨季にさえぎられて麦畑すら見えない
 聖典を拵えようと農具を借りてエレベータをあがる
 エレベータはどうして成層圏まであがらないのか
 農家ももはや雨の隠語だ
 あらゆるものが雨を表わしては消える
 きみはエリオットを呼び、廊下へでる
 ぼくはブクを探してポーターを呼ぶ
 やがてできあがった聖典で支配人を撲り殺し、
 みんなが雨になったあと、
 ゆっくりと自動車をだす
 けれどもここで誤算だ
 もはや自動車でさえも雨になり、
 ぼくでさえも雨でしかない
 長い雨季が終わるまで
 支配人は驟雨して
 やがて水の彫像と化し、
 雲になり、雨になり、やがて海や河になるのだ


夏についてのノート


 どうしても欲しいものが見つからないとき、
 かわりのなにかで補えないとき、
 草色のわるあがき、
 測量士の補正が終わらない、
 夏
 たったいちどきりの出会いを乗り過ごし、
 ぼくはただ、
 おどけてみせるだけ
 きみがどこにいるのか、
 ぼくは知らない
 いつか見た公衆電話のなかで
 きっといまも20年まえとおなじように
 夜通し、行き場もなく本を読んでるにちがいない



自由詩 秋についてのノート Copyright 中田満帆 2018-09-16 12:42:33
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