燃える太陽が
こたきひろし

燃える太陽が火の気を失い、全く燃えない太陽になってしまった。

地球はどうなってしまうかなんて、私は学者じゃないからわからない。

きっと著しい環境の変化が地球上の生命をいっぺんに抹殺してしまうに違いないとは想像する。
そして
そうなったらおそらく地球はマグマさえ一瞬に冷却してしまい、そのまま氷の星になってしまいそうだ。

彼は一人住まいをしていたアパートの部屋でその時を迎えてしまった。
自然の明かりが突然なくなって、光という光は宇宙のブラックホールに封じ込められても、彼の心臓と血流は一瞬も止まらなかった。
正に奇蹟が起きたに違いなかった。

勿論ライフラインはことごとく破壊された。
彼は電気をつけようとして絶望した。水道の蛇口をひねって望みを絶たれた。
それからアパートの部屋のドアを開けて外に出た。

彼の眼には凍結した街の景色以外見えなかった。
街の至るところで人間は凍死していた。
一組の男女が抱きあって口をつけあって、死んでいた。

若い男女の男の方は知らない顔だった。女の方はよく知っていた。
彼は周辺の家の物置からハンマーを調達してきた。
ハンマーを使って男の遺体を粉々に砕くと、残った女の体を抱き締めて、彼は自分の体温で暖めれば女は生き返るに違いないと必死になった。
すると女の体はみるみる内に解凍して命を甦らせた。


それから彼は女の耳に口を近づけて甘く囁いた。
時間がないよ、僕らは一刻も早く一つになって、世界で二組目のアダムとイブにならなけばならないんだから。


自由詩 燃える太陽が Copyright こたきひろし 2018-09-10 01:44:01
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