シリーズ ー チバ人としてのあり方。①
よーかん

チバ人でも、栄町を歩く人間は限られている。ボクは外ものだから、どうしてもサカエマチと呼んでしまうが、正しくは、サカエチョーらしい。四街道の行きつけの散髪屋のマスターが言っていたから間違いないと思う。
JR千葉駅を降りてロータリー側を大通り方向に渡って、今だとファミマの裏の斜めに流れる細めの道をテクテクとまっすぐ歩けば、小さな橋を渡ったあたりから栄町らしい栄町がはじまる。
外部から観るとただれた感じがする街なみ。看板が多い。色彩感覚が古い看板が目立つ。いや、街にそんな看板が溢れているため馴染んでいる。外部から観るとと書いた。栄町の内側は、礼儀正しく心の大きな人たちが住んでいる。ヒトが存在するかぎり必ずあり続ける職業を静かに守りながら、栄町はこじんまりとそこで、誰の訪問も拒否せずに待ってくれている。
定期収入との縁が途切れてしまった。喧嘩だ。
いつものことにしてもやっぱりこたえる。謝るが絶対に一度とった行動を撤回しない。それだけが、オレが奴隷じゃない証拠だと自負している。相手の言葉に反応したわけではない。電話越しの相手の意識の身勝手さにあきれてショートメールでメッセージをしただけだ。そっちが頼んだのにその態度はなんだ、あなたにもガッカリだ。そう書いた。相手はジブンに送られたショートメールを会社のナカマに告げ口し、ジブンの立場を守ることに徹した。オレは悪くない。その会社の上司達二人に呼び出されたが、俺の顔を見るとすぐ笑顔になり、必要な道具を代わりに倉庫から探し出してくれた。ただ、それはそれ、これはこれだ。それ以来、そこから仕事を受けなくなった。俺の値段は安いが、俺の意思は安い値段では変えられない。今は半分以下の給料ではあるけれど、派遣の仕事で満足している。別にこれと言って変わらない。餌が安くなるだけだ。タバコの値段が上がるのが少しつらいくらいか。そういうのには、やはり苛立つ。
嫌煙家が道徳的に男を軽視するようになってもう何年もたつ。栄町のソープでも、大宮かどっかのビルで火事があってから、禁煙の待合所が多くなった。部屋でもそうだが、嬢がゆるしてくれるから俺は吸うときがある。勧めてくれる相手の気分しだいという感じだ。嬢達は俺がいくと嬉しそうだ。バカだなぁと呆れる奴等は、嬢達の女性を理解していない。優しい娘達のほうが多い。くたびれていたりするのに、相手にサービスばかり求めて、相手にジブンの妄想の姿だけを強要するだけで満足している、そういった男ばかりだから、日本はニホンではなくジャパンなんて恥ずかしい名前で呼ばれるんだ。嬢がジブンの暮らしの姿を話したくなるような、そういった時間を持てるジブンがいる時は、なんだかまあ、人生も楽じゃないけれど悪くはないなと思える。
俺は若い娘以外なら、どんな嬢でも楽しい時間を相手に持ってもらえる、普通の男だから。一度だって嫌な思いをしたことがない。立たなかったことは数回ある。好みってのはしょうがないから。それは嬢にとってショックなことなんだろうけれど、ジブンの笑い話にしてしまうから。嬢はそういう時、いつの間にか、お腹を抱えて笑ってくれるようになる。優しい女性ばからなのだ。優しくなければ汚い老人を数人も毎日相手にすることなんてできない。男の暗い何かを受け止めることで、彼女達が日本の日常を守ってくれていることにさえ、一般的な大人がまったく理解していないことに呆れてしまう。分かるかな。栄町には、優しい人達が住んでいて、誰の訪問も拒まず、嬢たちの生活を支え、嬢たちの子供達の成長を見守っている。国がそんな心でヒトを見守ったことなんてあるのだろうか。栄町にオンナ達は使われ、男達にオンナは汚されている、そう思っているのなら、それはアナタが、道徳的な自分本位の美意識で嫌煙運動だけでなく、嫌女性、いや自立蔑視な心だけでヒトの人生を捌いているからだ。
相手の価値なんて、君等に測る資格なんぞ、あったためしなんか無いのだから。過去の事にばからい拘っているのは、もしかしたらエセ保守な、なりたて保守な、アンタラなんじゃないかな。


散文(批評随筆小説等) シリーズ ー チバ人としてのあり方。① Copyright よーかん 2018-09-09 23:27:12縦
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