蟷螂
こたきひろし

火に油を撒きたいような気持ちになることがあった
言葉に出来ない苛立ちが沸点に達してしまいそうになって

体内を無数に張り巡らされた管を赤い血液がさらさらと流れてぐれない
得たいの知れない不安と焦燥にかられていた
その日の午後は
真夏の炎天の下にあった

蟷螂が一匹
思いもよらない場所にいたのだ
蟷螂は鎌切りとも呼ぶらしいが真偽の程はわからない

よくよく私は言っておかなくてはならない
蟷螂に対して
子供の時分からその姿を見ると鳥肌がたってしまうって

なのにどうして
寄りによって
けしてか弱くはないけれど
私という女の
女の中に入り込んだの

あんたの中に寄生するハリガネムシみたいに
棲みつくつもり

蟷螂
あんたは雌
雌なら交尾の後に雄を食い殺してしまうって聞いた事あるけど
あれは本当なの
まさかあんた
私という女のなかで
繁殖したりするつもりじゃないわよね

私というけしてか弱くはない
女の中で



自由詩 蟷螂 Copyright こたきひろし 2018-09-07 05:49:33
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