波紋の残像
ホロウ・シカエルボク


熱帯夜、青褪めた路上で血を吐いた
のたうち回る放熱の過去
祭壇はニコチンと、それから
もう少しイルーガルな煙に煤けて
性急過ぎたエイトビート、カタルシスの
生真面目な断絶の残骸
摩天楼はいつだって白けていた
生命のあがきや輝きは
やつらにはさぞかし滑稽に映ることだろう

切り刻んだ自分自身の
深い傷から流れ出た赤い血液を
どんなふうに差し出せばとそればかり考えていて
レッドゾーンを越えたことに気づかなかった
床はいつだってありえないほど
新鮮な赤に染まっていただろう?
叫び疲れた喉が休まる暇もなく
始まる悪夢は時間を問わなかった
起きていようと眠っていようと
或いはそのどちらともつかない
朦朧とした時の中でも
それはいつでも一番虫が好かない出来事を囁き続けていただろう

ピアノと、アコースティックギター
形を変えた愛と、例えるならばロザーナ
真摯で、真実であろうとすればするほどにそれは歪み
穏やかな蟻地獄のように暖かで残酷だった
すべてを知ろうともがいているくせに
どこで踏み外したのかまるで判らなかった
過ぎ去っていくものの
立ち去っていくものの数ばかりかぞえて
二五時の灯りは太陽よりも強烈に目を焼いた

約束を気にし過ぎていたんだ、いつだって
約束が大き過ぎて、いつでも
激しいサウンドの中で、迷子みたいな目をしていた
産まれてそのまま放り出された赤子のように
それが世界だと知る前から凍えているみたいだった
いまあるものが眠りだろうが
それとも同じ苦悶だろうが
永遠になることは出来た
だけどそうなるには
ほんの少し代償が大き過ぎたよな



夜明けまで
あと少し



自由詩 波紋の残像 Copyright ホロウ・シカエルボク 2018-09-06 00:10:33縦
notebook Home 戻る  過去 未来