忘却
もとこ

九月になったら
もう
その話は終わりですか
大きな嵐がやってきたので
今はそのことで精一杯ですか

そんな風にして
歴史は錆びついていくのでしょう
その時代を生きてきた人たちが
一人、また一人と退場していきます
入れ違いに登場してくるのは
口の上手い詐欺師たちです

彼らの弁舌によって
あったはずのことが
なかったことにされるし
まるでなかったことが
あったことになるのです
知らないわたくしたちには
語る資格がないと言いながら
彼らは知っているふりをして
見てきたように嘘を吐くのです

彼らは道化に過ぎません
王様のために働いています
そして王様の目的は
同じことを繰り返すことです
今度はもっと上手くやるのだと
リセットできない命を使って
歴史をリセットするつもりです

今日もまた
ゆっくりと、しかし確実に
王様はネジを巻き続けます
そして彼が手を離したら
悲願の茶番劇が始まります
わたくしたちは消費されるでしょう
無造作に使い捨てられるでしょう
そして最後にはまたしても
屍の山が残されるのです
そうなった時に
 ああ、
 今度も間違いであった

呟く人は残っているのでしょうか


自由詩 忘却 Copyright もとこ 2018-09-05 14:39:04
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