市営公園の駐車場に
こたきひろし

市営公園の駐車場に車を停めていたのは午前二時頃だった。
四月の深夜だった。
公園内には小さな池があって、だからk池公園と名前がつけられていた。
池の回りを遊歩道が一周している。桜の樹が沢山植えられていて、暗闇の中に満開に咲いていた。

まだ産まれない胎児のままで、女のこが池の中で水を浴びていた。
それはもしかしたら母親の子宮の中かもしれなかった。

彼は運転席で体は眠りながら意識が覚醒していた。駐車場には他にも数台が停まっていた。が、暗闇に沈みこんで車内に人の体温は感じられなかった。いくら夜桜が満開とはいえ時間が時間だけに公園内は無人だったに違いない。

女のこの胎児は水を浴びるだけにとどまらずに泳ぎ始めた。
同じ時間に彼の最愛の妻は産院にいて陣痛にたえていた。
初ての出産だった。いつ産まれるか分からなかった。
彼は、
病院の下でなぜか頭をかかえて待ち続けていた。その内に看護婦が近づいてきた。
「ご主人、まだまだ産まれそうにないですからいったんお家に帰っていただけませんか。何かあったら携帯にお電話差し上げますから」
それを言われて彼は何となくほっとした。
正直この状況から、逃げ出したい心境にあったからだ。

しかし誰も待たないアパートの部屋に帰る気にはどうしてもなれなかったから、彼は途中で公園の駐車場に車を停めてしまったのだ。

病院にからは
まだ何の連絡もないのだから産まれてはいないだろう。
彼は運転席から降りて夢遊病者みたいに公園の中に歩いて行った。
まだ産まれてない我が子が胎児のままで池に泳いでいる。
もし溺れ死んだらと不安になってしまったからだ。

いつの間にか
父親として
父親になろうとして


自由詩 市営公園の駐車場に Copyright こたきひろし 2018-09-02 00:11:20
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