味噌汁よりもコンソメスープに近いが、コンソメスープの底はいつも辛い

雨が降っている
しっとりと空気に分散して
立ちのぼる湯気よりも不確かに
しずくは
天からおちるのではなく
わずかな風のほつれから生まれ
無垢の幼生は
たんまりと塵を食べ
等しく汚れてから
髪に 肌に 服に 鞄に
愛愛しく
じゃれついているのは
黒い折り畳み傘が
今日に限って晴れ専属を気取り
おさがりのジャケットも
五万円の鞄も
何一つ守ることなく
ボロ財布と幸せそうにふやけているからで
裾が 袖が 襟が 毛先が
色濃く
女のようにしなだれかかるのも悪い気はしない
から
歌でも歌おうかと
着膨れしたくもを見上げた
とたん
つぶてに打たれ
べろべろに伸びた前髪の
絡みつく酔っ払いのような厭らしさよ
すっかりさめた私に
猛スピードでぶつかった誰かの
小鳥が鳴いたようだ
けれども
振り返ったところで
もう
雨粒しか見えないのだろうから
まっすぐに
六秒後の私の背を見据えて
じっくりと
パサついた灰色の階段へ
安物の靴底を滲ませたって
バチは当たらないと思うでしょう


自由詩 味噌汁よりもコンソメスープに近いが、コンソメスープの底はいつも辛い Copyright  2018-09-01 15:49:24縦
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