こんなにおやさしい日照りの中を
奥畑 梨奈枝

川縁に壊れてあった
あの洗濯機
蒸し暑さに立つ寒疣さぶいぼの肌を撫で
何者でもなく
何者である必要もないらしいこと
寒疣さぶいぼの肌を撫で
自室を出る前に
緑黄色野菜ふりかけを
全身にふりかけた
得られたものと喪ったもの
交互に見比べた
つめたいシャワーの後
こんなにおやさしい日照りの中を
私は小さな涼しい木陰を目指し
雑草にはなれなかったと
掻きむしった瘡蓋
自動改札機で行く手を阻まれ
人と衝突し
右手からあらゆる希望的観測が滑り落ち
その画面が激しく粉々に壊れたとき
あの洗濯機は
小さな涼しい木陰にいた


自由詩 こんなにおやさしい日照りの中を Copyright 奥畑 梨奈枝 2018-08-12 22:02:08
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