汽笛のシミリ
面河関門

お母さんへ逢いにいく
遠いシミリはいらない
鳥のようなはね魚のようなえら馬のようなたてがみ
シミリは既にあなたのように備わっている
子鹿のように跳ね
心臓に爪先の雨を降らせ
硝子に沈む世界を抹殺するちから
夏のわき腹から溶けださぬよう
お母さんは色のまま化石になる
からだじゅうから液体がもれだし
道を汚し歩く清掃婦
地べたの侘びしい嘘をもみ消している
季節を捨てた償いが
土鍋にうずくまり
お母さんをむしり食う
出汁のとりかた
違う家の灯り
昆布そだつ冷たい海のシミリ
並べる茶碗の順を手渡す
夜汽車のキップ握りしめる癖
景色にすすむ山脈
シミリシミリせめてシミリで繋いでほしい
遠い距離からシミリで
あなたを引っこぬいて
月の鐘を打つ音がする
汽笛のお母さんへ逢いにいく
座席のとなりのシミリ
あなたの横顔はシミリ
車窓に映るお母さんのような
もうお母さんのようなあなた


自由詩 汽笛のシミリ Copyright 面河関門 2018-08-12 17:30:28縦
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