et cetera 小品集
空丸ゆらぎ・続

これは再整理なのでポイント等はいりません。




  浮遊物体

得体のしれないものが浮かんでいる
球体なのか
立方体なのか よくわからない
時々 雀がとまる
もう一年以上浮かんでいる
雨で落下するわけでもなく
風に流されていくわけでもなく
そこに 浮かんでいる

  「普段通りの朝」

葉が揺れ
雫が落ちる (私のせいではない)
普段通りの朝に「普段通りの朝」と
タイトルを付け、
線路脇の風車小屋で
私は風景になる
「標準」からはみ出たら闘うしかない
雲の流れに音はなく
時刻表通り電車が走る

  綺麗ごとのように桜が咲いた日

特定できない進軍ラッパ。街のざわめきに紛れて。
どこか焦点があっていない雑踏。
工場で造ったような笑顔。
散らかった記憶。
何十億の鼓動。
造りかけの御地蔵。
着いてくるな! 影に怒鳴る。

  冬の浜辺に置き去りにされた一つの椅子のように

幕が開くのをいつまでも待っている役者たちで観客席は満員だ。
何も始まらない。
心に弦を張り奏者を待つ。
誰も現れない。
地球儀に“故障中”と落書きしたあの日を思い出す。
五時の鐘が鳴り、風は狼狽えた。
幕が開くのをいつまでも待っている役者たちで観客席は満員だ。

 遮断機

遮断機が下がり
血のような警鐘に淡い想いは砕け散る
通過する車窓とつながる間もなく
街はもとに戻る

 ありふれた空

辿り着こうとする列に並ぶ
荷車を引く老婆が言った
休もう
いろんな記憶を傍らに置いて
汗を拭く
伴奏のように
ありふれた空が広がっていた

  In the noise

古びたエレベーターのボタン 
玄関には傘と靴がある
冬の空は泣かない
君が見ているのはぼくの記憶の残骸だ
空き缶が転がっている朝焼けの工事現場
私であり我々であるそれは
雑音の中で舌を出している

  口笛

みんなは明日へ遠ざかる
ぼくは取り残されたまま
本音は耳をすまさないと聞こえない
騙されないように 雑音を遮断しつつ
未完成の世界で
世間と折り合いをつけながら あるいは無視し
とりあえず小銭を持って
口笛は吹かない


自由詩 et cetera 小品集 Copyright 空丸ゆらぎ・続 2018-08-12 17:25:34縦
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