鈍行未来行き列車
山下ヤモリ

進行方向に目もやらないで
彼は車窓から今ばかりを見ている
時は線路を進んでいく
線路の先を気にも留めず
彼は車窓から今ばかりを見ている


進行方向に目もやらないで
僕は過ぎた景色ばかりを想っている
時は線路を進んでいく
線路の先に背中を向けて
僕は過ぎた景色ばかりを想っている


進行方向に目を見開いて
君はこの先に続く光景を描いている
時は線路を進んでいく
線路を過ぎた今や過去を力に
君はこの先に続く光景を描いている

進行方向に目もやらないで
僕は真正面に立つ君を見ている
時は線路を進んでいく
君は僕の方を向いて
僕という存在に焦点を合わせることはない
この先に続く光景を描いている君を
僕は

「お客様にお知らせします。切り離し作業を終えましたので電車発車致します。閉まるドアにご注意ください、黄色い線の内側にお下がりください。ドア閉まりまあす。」




自由詩 鈍行未来行き列車 Copyright 山下ヤモリ 2018-08-10 21:34:02
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