遺書
日々野いずる

今度生きたらレモンを摘みに出かけようよ
木漏れ日のイタリアンイエローで手を汚して
その夏の麦わら帽でさえぎられたわたしを探して
探してよ
この夏の先
子供の影とか空き缶とか茜色の空、猫の集会に
とても愚かだけどわかって
わかって
がっかりするあなたは健気で清廉でうつくしいから
わたしが夏になればいい
入道雲の城でマンゴーをつまみながら
スコールであなたの頬を濡らして
すこしだけほっとしたいのも
肩を寄せあって体温を伝えて汗を流したいのも
これは無くなるから
無くなってしまうのだから

今度やりたいことを考えておいて
わたしは
今度はあなたと散歩に出かけることくらいはやりたいから
用意して待ってて


自由詩 遺書 Copyright 日々野いずる 2018-08-04 08:40:00縦
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