にがい いたみ
田中修子
乱れ散る言葉らに真白く手まねきされる
祖母の真珠の首飾り
記憶の そこ 瞼のうらの
螺旋階段を 一歩ずつ 一歩ずつ くだる
(そこで みた おそろしいことは 忘れます)
コツ コツ コツ ルビーの靴 黄色い煉瓦をふみ
バッヘルベルのカノン
幾度も乱反射する
蓮華の花言葉と 式子内親王が
「 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 」
(三、二、一) しろい へや
狭い窓 夏の夕暮は大火
赤い雲の けむに まかれた
いちばん そこで みたはずの
幻に 喰われた
いますか? ここにいますか?
あなた の そこ に います
道草に散らばる
四つん這い で かかとを 鳴らす
ランドセル
骨 骨 骨 忘れられきった 音符たちのよう
こわれた真珠の首飾り
おひさまに近づきすぎて溶けた蠟の羽根
※るるりらさんの詩から、羽のかたちにするアイディアを拝借しました。
自由詩
にがい いたみ
Copyright
田中修子
2018-08-03 15:01:32縦