ユウダチ
邦秋

愛するものを愛するだけの時間も無いから起こした夕立ち


重力に素直に流れゆく川を
触れればその水は新しい

雅印が拒んだ、なぞっただけの文字
額縁が冷めた目で見ている絵

今日は何を想って右手は弦をはじいている?
同じ景色の部屋、昨日とは何が変わった?

青い風を切り走れば 服の重さと時の尊さを胸に感じて
愛するものを愛するだけの時間も無い
沈む暇(いとま)も回り道も許されぬから


マフラーも巻かずにオーロラを目指した
狂っていたのは盤面か? 針か?

持ち手には痛まない棘には棘を贈って
電波が飛び交う空から覗き放った「さよなら」

夕立のような亀裂と刹那ささえも
幸せのためには時に必要で
体を流れる赤が濁らぬ様に
古きは捨て新たを産んで真実(ほんもの)に近づく


見えない蜘蛛の糸に張り付いた言葉なら
歩く速度ですらもポケットから落ちていった
振り向かない


洗い立ての心が黒く染まっていたのは
薄い灰が厚く重なっていたから
愛するものを愛するだけの時間も無い
仮面の優しさを断って今貴方のもとから発つ


自由詩 ユウダチ Copyright 邦秋 2018-08-03 07:47:34縦
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