傍観者
山下ヤモリ

ぼくにもキミにも二つの人格があってさ
二重人格とかそんなんじゃなくて
星のゆりかごに揺られながら
人は二つの人格をそこで宿すんだ

ぼくにもキミにも二つの人格があってさ
二重人格とかそんなんじゃなくて
星のゆりかごから生まれ落ちてくるときに
人は片方の人格をそこに置いてきちゃうんだ

ぼくたちは全体を観なくちゃいけない
軌道上に置いてきた人格から
地球の傍から
ぼくの傍から
キミの傍から

ちゃんと世界に冷たくなれるように
ちゃんとぼくに冷たくなれるように
ちゃんとキミに冷たくなれるように
ぼくたちの人格はオリオン座にあるんだ

でもぼくもキミもオリオン座へ行く術はない
だから星を見上げるんだ
そうやって意識を軌道上に送るために
そうやってぼくらは立派な傍観者になった

空を見上げていると
闇夜を流れていく星が見えるだろう

それは誰かが傍観者をやめた軌跡
それは誰かが傍観者となった軌跡

星に置いてきた片方の人格が流れ落ちてくる
キミの傍に並びたいと
キミの傍で観てたいと
ぼくが星に願った日のように

キミもいつか願うのだ
全体の中でそんな誰かを見つけたのなら
キミもいつか傍観者をやめるんだ
キミもいつか傍観者をはじめるんだ

キミを見つけたぼくのように


自由詩 傍観者 Copyright 山下ヤモリ 2018-07-22 07:28:24縦
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