山人

目を開けたまんまの
ぬるぬるの
水を切るように泳ぐ生き物
魚になって
川を泳ぐんだ
川面の虫を捕らえて
ぱくりと
岩陰へ潜む
心地よい風は水
液体の風
だから風の摩擦を感じる

あなたは川
繰り広げる歴史と重さを漂わせ
私はあなたの中を泳ぐ
あなたの流れに
摩擦に促され
私はあなたの
水みちを泳ぐ


*


私は気弱な動物にさえなれず
眠ることも許されない魚だ
潮の重さに鱗をはがれながら
私は泳ぐ
瞼は閉じられることなく見開き
形はいつも同一の流線形
立ち止まって考えることもなく
私は泳ぐ
鱗を擦る海水の直喩の肌触り
時折さす海面のまなざし
口から肛門へと流される思考
私は魚だ
魚以外に生きていられなかっただろう


自由詩Copyright 山人 2018-07-19 04:51:26
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