水喰み
木立 悟





川に降る星は再び昇り
沈む舟を水紋に覆う
午前三時のまばらな夜灯
出来もしない約束の群れ


腕の羽 腕の花
骨の花 たちたちと降り
違えたもの
失くしたふりで 隠したもの


偽の酒の美しさと不味さ
屍肉に撒いては燃え上がり
飛沫と飛沫はこすれ合い
何も無い夜へ音を散らす


影は重なり 崩れ
重なり
夜の海の上 蒼く
過ぎ去り


浪は鳥
鳥は星
星は還る
星に 還る


欠けた魂を岩で埋め合わせて
井戸に集う民は歪んでいった
硝子の器のうたがあった
わずかに霧を溶かしながら
霧に霧を描く指があった


粉の手を振り
滴を受ける
見えないかたちが
粉を歩む


生まれ死ぬ星の薄皮
網と唇のはざまの風
重なりを呑み 重なりを喰み
振えは再び 宙宇を揺らす


















自由詩 水喰み Copyright 木立 悟 2018-07-17 00:33:13
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