海開きの七月に生まれて初めて踝を刺された
Lucy

頭が痺れているのは
岸辺近くの水中に羽衣のようにたなびく
蒼い女神の腕に触れたから

以来生ぬるい泥水のような睡魔に圧迫され続け
うっとりと窒息できるわけもなく
私の引き出しの中を勝手に片づけないでとろれつのまわらない口で
大声で言おうとする夢を見ながら
ひどく疲弊してじわじわと
朝の水辺に
ハングル文字の剥げかけた
洗剤容器のように打ち上げられ
本日も無事に目覚めた幸せが
気怠くけだるくまとわりついて
コーヒーカップがとても重い

新聞の文字が濁って見えにくいのでメガネを
調整したいのです
音が曲がって聞こえるのでピアノを
調律しなければ
窓が曇っているようなので
今度の休日に磨こうと思います

何を見ても聞いても
膨大な泥水に塞がれたように
心が動かない
のは メガネやピアノや電気海月のせいではないと
ほんとうは気付いている



自由詩 海開きの七月に生まれて初めて踝を刺された Copyright Lucy 2018-07-11 21:28:41
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