鬼の瞳
春日線香

鬼の瞳を拾う。それはとても貴重なものなので大急ぎで懐にしまいこみ、何食わぬ顔で日陰に移動してまじまじと眺めてみる。灰色と薄紫色の中間の色彩はよく磨かれつつ深海を思わせる深みがあって、世界の真実がここにあると思わせるほどの存在感を放っている。右目だろうか左目だろうか。鬼は瞳を奪われてどんな苦しみを、どんな絶望を感じているだろうか。失った瞳が生え変わるのには長い時間がかかるだろう。嬉しい気持ちで握りしめる。それは硬くひんやりとしている。


自由詩 鬼の瞳 Copyright 春日線香 2018-07-09 21:25:51
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