サバンナの光と液
渡辺八畳@祝儀敷

半粘性の液がとくとくと垂れ流れている
青緑の、今は白反射な広野に透き緑な液が注がれている
心地よく伸びる地平線に赤若い太陽は沈もうとしていて
斜度の低い残光が針としてサバンナを走り抜ける
その針が地を漂白してまぶしい、太陽も地もその日の終わりに輝いている
美しい、上へ下へ広がっていく空間もまったく美しくて
美しくて、美しくて、気持ちがいい

流れる液体は動物たちであった
ゾウもキリンも、今日はもう終わりなので自ら溶けてしまったのだ
それぞれの背丈から湧き出る瑞々しいとろりとしたうるわしい緑の液体
見るだけでもひんやりとしてくるそれが大地を潤していく
太陽がてっぺんのうちはライオンもカバもめいめいに動き回っていたけれど
日が終わるころにはどの動物もその場に立ち止まって
サバンナの荒い木のよう体を溶かし液体に変わって流れていく
とくとくとリズムよくすがすがしい液体翡翠
傾いた太陽からの光がそれを通過して刺さるのも気持ちがいい

目の前にアカシアの木はなく
滑るように心地よく地平線が伸びていてもはや快感そのものだ
上から流れ落ちる液体の中で私は潤っている
たぶんこれはハイエナだった液だ、なめらかに私の縁を流れていき
私が立つ、少し粘りのある緑色な液体が垂れていくこの大地も潤っている
今日はもう白く焼けきった、カラカラな草も潤ってきれい
透きとおる液体に包まれて私もやわらかくなっていく
この中から見る沈みかけた太陽は宝石のようですごくきれい
美しい、美しい、なにもかもが美しくてきれい

太陽が昇れば動物は動き出して
一日がまた始まるのだ


自由詩 サバンナの光と液 Copyright 渡辺八畳@祝儀敷 2018-07-02 19:18:04縦
notebook Home 戻る