「なので、先生、どうしてもね
　ポジティブ思考ができないんですよ」
「そうですか
　ポジティブ思考ができない症候群ですね」
「先生、なんかそのままの病名ですが？」
「そうです、それでいいじゃありませんか」
「治るんですか？」
「治りません、諦めて
　ネガティブであることを、ずっと
　ネガティブに考えていくしかないのです」

「治療とかは？」
「それが治療です
　まずは、ポジティブ思考から解き放たれて
　自分はダメなんだと考える自分がダメなんだ
　そう考えて答えが出せないからダメなんだ
　ダメなままが許せないからダメなんだと
　追い詰めて、とことん嫌になってください」
「そ、そんなぁ」
「人間は自分が嫌になるために生きています
　自分が好きになったら成長は止まるのです
　自分が変わっていくにはネガティブが必要なんです」

「それじゃ、嫌になれば良くなるのですか？」
「なりません
　治療があるかとの質問ですが
　先ほど言ったように
　人間は本来、ネガティブ思考です
　なので、正常な思考に戻して頂くだけです」

「でも、もっとポジティブに生きなさいと
　前の病院では言われたのですが？」
「あのですね、ポジティブ思考は病気なんですよ」
「病気なんですか？」
「そうです
　ただね、一病息災でね
　ポジティブ思考という病を持つことで
　残りの人生を大事にしようと思う訳です」
「はぁ、なるほど」
「ネガティブであることを
　ポジティブにとらえていけばいいんです」