時代
こたきひろし

時間は流れているらしい
その一途な流れを人は河にたとえる
時間は流れて止まらないらしい
それが河ならば水のように透き通っているのか

時間は流れて止まらないのであって
けして雨になって降って落ちて来たりはしない
時間は流れて止まらないので
時間をポケットに入れて駆け出したりしたら転んで奈落に落ちてしまうかもしれない
そんな事起こる訳がない

ある朝に
女は男へと背後から近づいてその両手で目隠しをした
男は驚いて女の手をいきよい振り払った
女は男の思わぬ反応に戸惑ったが甘える声で
ごめん、怒ったの?
すると男は答えた「子供の頃から目隠しは苦手なんだ」
それを言われて
そうなんだ、と女は声を沈ませる
でも、それから間もなく気を取り直して女は男の耳元に口を寄せた
そしてそっと囁いた
「ゆうべはとてもよかったよ。あなたはどうだった?」
それは昨夜の男と女の営みへの感想だった
「もちろん僕もだよ」
男は空かさず答えた

もとは他人の男と女を強く結びつけたのはセックスだった
ひとつ屋根の下に棲んでいればそれが自然だっだよ

時間は流れて止まらない
男と女の激しい性と愛は、気づけば生殖の為にあった
二人の間に子供が生まれ子供が育つと
父親と母親はいつの間にか男と女を忘れてしまった

時間は流れて止まらない
それを塞き止めて上流へと戻れはしないという現実
とは闘えないんだな


自由詩 時代 Copyright こたきひろし 2018-06-22 05:40:39
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