五月雨
非在の虹

五月雨にうずくまる真昼
五月雨が集まらない

また丸い空洞から埋まってゆく失望がある。
静けさを避けて 腫瘍のように広がる声
巻き上げたほこりすら元の地に返す声

すべてに人の顔を描かずにはいられない画家のようだ。
そうではない。幹の根元を濡らしている鉄の塊だ。
ああ、五月雨が降るじゃないか。
田畑の泥の中から立ち上がる人々
性器に稲の苗を植えて
午後の食物を見つめる男女。
見つめ合う男女が濡れた側面にこだわる。
すべてが濡れてしまった。
激しい後悔の念。
鏡面を遮るざらざらのカーテンを身にまとい
体の片隅に光る動物が這いまわり
にぎにぎしく歩き出す装飾過多の眼差しがびしょぬれだ。
自暴自棄の叫び声が
耳、耳、降る、降る
雨の降る生暖かい地平に木霊している。
かと思うと唐突に終わった


自由詩 五月雨 Copyright 非在の虹 2018-06-17 14:47:34
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