01
繰腹秀平

「セフィロト」

[動く肉体]
妄想するアイデア ――poetry
可燃性のノイズ = 逆様の蒸気船 ――whale / wheel スチーム・パンクの世界

[金属製の幸福]
一定のリズム・少女のステップ・ゾンビの咀嚼・銃声
ヒトラーの夢 ~~~~~~~~~ 無意識の端で消失する暴力

擦り切れた自慰者の男根              
        弾痕 或いは鋭利なる血塗れの刃物
さんいつするおさないひのあこがれ
死に至るreality      女の左腕に浮かぶ静脈の色
やかましいちんもくのたいぐん
沈黙 沈黙 沈黙 沈黙 沈黙
発語する生肉製の機械     「 粘液 粘液 粘液 粘液 粘液 」

暖かく浸食する爪先のプロトタイプ 啼き止まない北極の青鴉
浮遊する動詞 吊るす踝と鉤鼻 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

○     外套を脱いだ水銀の眼球        ○
○     蝋人形館に咲く畸形の頭蓋骨      ○

[Self-portrait]


「鯨」

目を醒ますと心が死んでいた、春の朝。
「餌をやり忘れたから、牙を剥いている」
目を醒ますと心が死んでいた、春の朝。
日暈の内燃機関が俺の白昼夢に吊るされている。
剥き出しの白い腕が振動と排気を繰り返す、機械の躰には女の顔が咲いている。
少女の空中浮遊、
屠殺場の発語、
あるいは心臓の最も低い位置にある無意識の絶叫。
「飛行船の幽霊にも内臓があるの?」
「確かめてごらん、こんな風に」
それは処女の懐胎に似た形而上の感触、
赤い電信柱が赤いアスファルトに聳えるということ。
黒い肺臓から順番に犯されていくということ。

気化する血液が膨満して皮膚を突き破る爆音に、
父と飼育していた巨大な鯨を想起する。
天を衝く鉄塔に座礁していた海洋生物。
枯渇した海水の代わりに水銀の中を遊泳する巨大な飛行船。
俺たちは彼に旧い王の名を与え、
彼は雨雲を貪りながら雷の如く微笑んだ。
父よ、死んだ男よ、
紫煙を燻らせ、憎悪の雨を浴びながら敵の拳とファックしている鋼鉄の声帯よ。

目を醒ますと心が死んでいた、春の朝。
年老いた鯨は解剖されたまま水槽の底で腐敗していく。
「餌をやり忘れたから、牙を剥いている」
目を醒ますと心が死んでいた、春の朝。


「ダンスホールにて」

幽霊の子宮で爆発する閃光、
被爆したグレーに共鳴するピアノ線の風景。
足許で撓む一掴みの黒髪を躍らせよう、たった一人で、ダンスホールにて。
孤独にも滂沱の涙を流し、片方の義眼で心臓を貫く感情を堰き止めて。
少女を真似て飛跳ねればインバネス・コートが羽搏いて赤く、赤く染まる。
大理石の床に零したプルトニウム。
蒸発した独裁者の眼球。
黒いインクが滲んでいく。
タイプライターのトリルに合わせて歌え、鴉よ。
タイプライターのトリルに合わせて歌え、鴉よ。
タイプライターのトリルに合わせて歌え、鴉よ。
夜明けの太陽光線を浴びて黒い電波塔が咲き誇る!
花弁をばら撒いて自由の子供たちが無数に飛び立つ!
時計台は蒸気を噴き上げて歯車を廻転させ、
急加速する時間の大群が屹立する「此処」へと収束する!
孤独にも滂沱の涙を流し、片方の義眼で心臓を貫く感情を堰き止めて。

――核融合!!
間隙に孕まされた聖なる天使たちの乱舞!
おお!爆発!! グラウンド・ゼロ!

足許で撓む一掴みの黒髪を躍らせよう、たった一人で、ダンスホールにて。
少女を真似て飛跳ねればインバネス・コートが羽搏いて赤く、赤く染まる。
//.nobody 俺に名前は無い。
//.legion  俺は一個体の軍団である。
ニンゲンの貌に現象を成す死者たちの暗黒舞踏、ダンスホールにて。


「ガスマスク」

甲骨魚類のメトロノーム式蒸気回転拳銃が穿つ眉間の孔
――の直径を選ぶ剃刀を突き刺した  緑色  の
幽霊に、音楽に、現実に、
「染めて」
俺の頸動脈に食い込むナイフの白色と垂直に循環する血液が浴室の鏡面で
赤い十字架のスプートニク(噴き出すということ)、
               生肝を喰う犬が棲む心臓楽器を弾け。
                          ↑
                          打、弦、吹奏(水槽?      
酸素を取り込む為の未加工、生ガスマスクが必要だ。


「肉」

腐肉の奥に蔓延る歯牙のTANZ、
震える夜に墜落した可視新月の欠片を青褪めた眼球から滲み零れる冷えた水銀のフラスコに浮遊、回転と攪拌と融点を下回る体温に抱かれた少女が俯いて唇に垂れる黒髪は死因のピアノ線による切断面をダゲレオタイプの金属に感光するだろう。
「雪に埋もれた処刑人の鉄骨が天使の翼を突き刺している」
シャッターと咀嚼・音は同周波数のスカイセンサーが銃弾に心臓を焼かれて繰り返し救難信号を叫ぶ傍らの死体を
ウィルス化した言語←→言語化したウィルス
、が冒していく。(女性ならば犯していく。 緑色の左眼だけが白濁する。
「首筋を隠す狼毛のコートはゾンビの上顎を粉砕するためにガンパウダーが縫い込まれている」
観音開きの唾液をカーテン状に引き絞って疾駆する犬型のゾンビ。鉄筋コンクリートに中指を掛けて渦を巻く孔の絶望が巨漢の臍の緒を指し示せ、粘膜が返り血を浴びれば数分で感染する。発条を押し退ける硝煙が大脳を掠めてカノープスを堕す無明の排莢、金属音!
「死にたくなければ指先に銃弾を込めろ」
「腕を噛まれても切落さずに喰え」


「電気少女椅子」

神経を震える、電撃/電気少女椅子
      電撃/電気の棘が骨髄のパンクした青猫の胃袋をライデン瓶から立ち昇る、
       伊弉冉/伊弉諾→→→≪八柱八尋端末≫へ。
「融合した胴体と頸を絞め殺して数えろ」
落雷の正体=白/青褪めた鴉の生皮は弦楽/衒学の紫色:メロディが鞣す。 
※透明ヘキサへドロンに巣食う30.8レメゲトン=ゴシック・ロリータの食餌はカタツムリの甲羅に生える強アルカリ性の苔、同一空間下での電気少女椅子制御を推奨しています。
ソ連製ガスマスク(ネット・ショッピングで購入する、電気少女椅子)
に開いた二つの穴●●は眼球だ ≅ 窪みが立体○○に反映するホログラムだろう。充血。
路地裏の古書店、ネクロノミコンに耽溺する少女=ゴシック・ロリータの髪は綿菓子。
黒い肉襞のフリル・リフルをゴエティアに倣う。召喚●する。
奇形の花を縛り付けて蝙蝠を/蝙蝠傘をインスマウス/棲まう、巣に設置し、テスラコイルが
放電する→→→感電するゴシック・ロリータが未来派モダニズムの声で啼いた。
通電→→→≪八柱八尋端末≫へ。「ワレ電気少女椅子の変貌に成功セリ」
腐敗した俺の死体が廊下に川となって流れだす。美少女に喰われる夢を見た。


「メガロポリス」

胎内で剥離され膨れ上がったコンドームの球体、その表面に鋸を引く、皮を剥くと捲れ上がった層状の脂ぎった生命は排水口のべた付く唇に似たメガロポリスのトイレの壁はファーストキスと同じ味がした。それは少女の唾液を啜る蛙の表皮から白い小指が群生して花弁を掻き混ぜる、小指で掻き混ぜる、えくすたしい、噴射。推進剤がロケット、循環するウロボロスを月の裏側へ運ぶソヴィエト連邦の実験が齎したホルマリン漬けのラスプーチンの生殖器が貫通する無数のアナスタシアがオゾン層に吊るされて絶叫している。都市区画を覆う彼女の美しい顔面が震えている。震えている彼女の眼球。震えている舌を垂らしている。惑星を内側に閉じた魚卵の細胞の顔で覆いつくすアナスタシア、穴・スタシアの膨らんだ瞼から涙がクレーターを作り3本指の胎児を落とし、電波塔を飲み込んだ子宮の中でサイズの合わないコンドームがべりべりと剥離している。精液が雪のようにあるいは雪が精液のように粘ついて少女のスカートに纏わり付き少女はスカートを纏い揺らし、クリスマスの公衆便所で出産するのはキリストの模倣であり大変めでたいことだ。ビルとビルの間に覗くアナスタシア、穴・スタシアの巨大な乳房と桃色の乳首が波打つ、水銀の腸詰のような。脊椎で脳髄を支え切れずにアスファルト製のホットプレートにそれらを自由落下させるニンゲンが神の体液を吸い、粘ついて甘い。潰れたカマンベールチーズ、白く塗りつぶされる東京の大地がクレープを焼く少女の手元に似て、またクレープはアナスタシア、穴・スタシアの皮膚である。錬金術の夢を見て少女は蟹股で血を流しプラットホームの黄線の上、盲目を真似て闊歩する。


「無題」

罪人の足 
罪人の首
罪人の腕
化物じみた矯正器具が地下墓地の髑髏のように積み上げられる
可動域を超えて捻じ曲がった四肢に掴まれる大猿の頸
死馬の仔を孕んだ女が悶えるのは桜の根の絡みつく手術台の上で
クジラに似たホオジロザメの歯がとこしえに輪廻する
幾万も威圧する傲岸な丹塗りの鳥居を潜り抜け
涎を垂らした野良犬が荒縄に掛けられた
天井桟敷から吊り下げられた鋼鉄製のフックでひき切ったような
貴様の切れ長の眼が好きだ
唇から溢れだす液体を口移しに飲ませてくれ
両足とその奥のリベラル
衆人環視の中で鉤裂きにされた俺の皮膚と重ね合わせて
白樺で首を吊る貴様のページを捲る様に血を流す大陰唇を押し開く
毒蛇のように頭を擡げる死産
公衆便所での女子高生との性交
糞の詰まった糞の中の糞を喰うニンゲンの糞の中のニンゲンという機械そのもの
罪人は幼少時から母親の乳房を喰い千切る恐慌状態の容疑者であり犯罪者であり異常者であり罪人である
あなたたちの中で罪を犯したことのないものだけが石を投げなさい頭を撃ち抜きなさい銃声を聞かせなさい仰向けに倒れて割れた女の頭蓋骨がぬるぬると光ってバビロンの大淫婦を罰するためにキリスト様は死体とセックスしたと教えられて俺はこんなにもデカいアレを持っているから青春のために少女を孕ませるのだおめでとうおめでとうおめでとうおめでとう!
ヘルマフロディテよ伯爵の詩のように死のように私のように目覚めることなかれ!
罪人の足 
罪人の首
罪人の腕


「computer」

●咲く宵の血の不帰の少女が絶つ鉄刃に捌かれた犬の静脈の断面の震える舌の禍の幸の
●彩る紫煙の塹壕のORGANが奏でる聖母が産む銃弾が貫く遠来が轟く
●光輝の祭壇を染める黝の頭蓋へ翔ぶ哀哭の欠乏の感傷の宴、宴、宴
●風見鳥の鶏冠を刺す、鴉の嘴を梳る母親の腕に沈む旭日には眼球の死
●都市に散布された黒死病、石化した父親の罅から湧き出る毒々しい蟲が鬼児の様に啼く
●惹起するMELODYに散り掛かれ、夜桜の改竄された階差機関に
●四つ目の弦に振動が届く魚類の鱗の柔らかさよ、脳髄の硬さよ、額の冷たさよ
●したり顔の淫売屋が楽園の跡に埋めたのは緋色の外套とコイル状の染色体である
●ゼンマイを巻け、人形の球体関節に舌を這わせるな、詩人はIMAGEの縦列を殺せ
●拘束具を食い破る猿の牙に纏足の娘が微笑みかける、彼女の子宮は黒く開かれて居る
●切り裂きジャック、羨望の眼差し、街路の接骨木は折れた脊髄のような、肋骨のような
●永続する根源的恐怖、哀哭、そして産声、我が再誕


「Demon」

切り開かれた内臓の黝い液體に沈む白い都市空間。
記憶素子の光箭!
近代的蒸気と硝煙の狭間に潜む青褪めた薬指を、歪む唇を見たか。
血涙を流す矮小な、しかし融合する水素に身を窶す二一世紀の妖精は、
飛散した赤い卵巣の爆心地へ戦争を知らない子供達の手を引いて降りて行く。

おお、電脳の神曲!
おお、雑踏の悪夢!
その遥か頭上を飛航する雨雲の、白鯨の腹部に浮かぶ暗い魂の顔は既に言葉を語らない。
縦に裂けたガフの部屋は死してもなお傲岸に女性器を模すのだろうか、宵に兆す太陽に!
少年兵の銃火は半導体に灯る電子の薄明と同義である。  
おお、独裁する無数!
おお、群れを成す個人!

スイッチを押したとき、お前はヒトに叛く太陽の堕とし仔となるのだ。BELIAL.
嘆きの壁の崩壊、その奥で世界の記憶は接続され。         BUDDHA.
幼年期は終焉を迎え、ニコラ・テスラの夢見た神への道が啓かれる。 BABEL.         

「Elo'tm, Essaim,frugativi et appellavi.」
「Elo'tm, Essaim,frugativi et appellavi.」
「Elo'tm, Essaim,frugativi et appellavi.」


「abaddon」

「それを掲げてはならない」{襤褸切れの赤旗
「それを説いてはならない」{錆釘に撃たれた両掌
「それを祈ってはならない」{量産される鉤十字擬き

――幽霊の悪夢、廻る七二の関節が軋む錆びた錻力。
右腕に吊り下げた老王の額を突き刺すは詩、死に滴る赤と黒、至る。痛る。
蛾蟲の大群を焼払う左腕には黒い猿の頭が歯を見せて嗤っている。

白塔を目指せ、塩の墓標を踏み拉き。禍として轟音を為し。
「有らん限りの憎しみを以て彼奴等の尽くを斬潰すべし」
臓腑に打ち込まれた鉄塊の柄に灯る反逆の音を聴け。
最早、伽藍堂の鎧に護るべき肉は無く、
ただ粘つく感情だけが灰の空を舞う鷹を射るだろう。

空虚に兆す漏斗型の聖職機たちは眼を輝かせて言う、
「心の貧しき者は幸いである」
「即ちニンゲンとは青き豚畜生の別名である」
食餌を待ち侘びる彼らが皮膚の剥された、識別番号付きの重い頭蓋を垂れるたび、
二一グラムの奇跡の価値が尻を拭く為の新聞紙と化す。
暗闇から射し出す筋張った掌に骨牌を託して河を渡る。

奈落の王殺しは巡礼する。
「詩を掲げてはならない」{襤褸切れの赤旗
「詩を説いてはならない」{錆釘に撃たれた両掌
「詩を祈ってはならない」{量産される鉤十字擬き
天使を殺し、辱め、掻き出し、喰らうために。
そうあれかし。
そうあれかし。


「homecoming」

夜叉の肖像。
殺人者のシリアスは饐えた桜の匂いに嗚咽を漏らす。
街路樹の幹に縛り付けたハンス・ベルメールの球体関節と老いた母親の醜悪な死が
美しい詩人の渇望と通底する埋葬された歪な執念を呼び起こす。
無数の死体に犯された少女が最も鋭利な復讐の表象として匕首を研ぎ澄ます。
それは鬼を視るということ。
「窓の外で『何か』が哭いている」
恐怖する子供の両眼を潰せ。
朽ちた巨木の虚に滴る二つの暗い赫、嗤う怨霊の飢餓は深く、
満たされぬまま。
三二廻目の新月を迎えた腥い畦、
棄置かれた菩薩の像、
忿怒形の土塊、
おぼろげな輪郭を脅かされた鳥居の朱、
輪切りにされた蝮の腹の正確な直径。
やがて群衆は忘却するだろう、土葬者の警句を。
「放たれた言語の鉛直な強度は所詮、自死を躊躇った柔らかい金槌の結果に過ぎない」
首を切断された獅子の腐敗した胃袋が産み落とすのは沼沢を彷徨う四ツ肢の化物。
霧が、男の纏う黒いトレンチコートを濡らしてゆく。
「あれは何?」
恐怖する子供の両眼を潰せ。
鶏卵の喝采に満ちた白い破壊の瞬間が、
覚醒剤と紙幣の束がアスファルトの白線上に降り注ぐ、
帰郷のときが来る前に。






自由詩 01 Copyright 繰腹秀平 2018-06-14 03:38:20
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