Rock
こたきひろし

今宵は満月。
海は闇と月明かりが入り交じっていた。

人か魚か、判断の難しい女が裸を晒していた。
下半身が魚で上半身は人間。
それが反対だったら不気味だったに違いない。
髪は長くて背中まで垂れていたし、顔は美しくて愛くるしかった。若い乳房はたわわに実り乳首はつんと上を向いていた。
海面に突き出た岩の上に身を横たえていたから、人間の若い男に見つかってしまった。
もしかしたら人間に見つけて欲しかったのかも知れない。無防備に姿を表したのはそのせいだろう。

男は猟師だった。魚をとるのには慣れていたが、人魚は初めてだった。
どうやったら傷つけないで生け捕りにしようかと思いを巡らした。
手荒な真似はしたくなかった。言葉で女を口説く自信はあった。
普通にナンパしてしまおうと考えた。
ワンナイトラブでもするつもりで軽いのりで相手の警戒心を緩めてしまえばこっちのもんだと思った。

若い猟師は小舟に乗ってそっと近づいた。
人魚を無事に生け捕りすると、舟に乗せた。猟師は早速頂こうとして、上半身を愛撫した。それから思いを遂げようとして断念しない訳にはいかなかった。
人魚は下半身が魚であったからだ。

人魚は下半身が魚であったからだ。もし反対になっていたら?と思ったが
どっちもどっちだと猟師は諦めて人魚を海に放した。

今宵は満月。


自由詩 Rock Copyright こたきひろし 2018-06-09 06:37:18
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