田園
ミナト 螢

灯りが消えた薄化粧の町に
虫の音が凛々と聴こえてくる
寝返りを打つ度にそれは消えて
いつしか枕を床に落とした

朝の気配に喉を枯らしながら
公園の蛇口を回して飲むと
次に誰が使うかも分からずに
明け渡せるのは平和な証拠

大きな建物や看板のない
抜けるような空を眺めていると
濁った瞳が澄んで見えるから
あそこには透明な光がある

稲が伸びると隠れてしまうけど
田んぼに映る逆さまの町は
芸術家の描く絵画みたいに
フレームの中に収まっていた

雨の日も晴れの日も美しく
季節の足音に耳を傾け
私の代わりにかかしを立てて
守って欲しい景色があるんだ

やがて訪れる銀世界の果て
雪化粧をする冬の真ん中も
君は壊れずに春を向いてゆく


自由詩 田園 Copyright ミナト 螢 2018-06-08 10:09:01
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