エデンのジグソー
ただのみきや

男がエデンの欠片ピースをひとつ拾う
女もひとつエデンの欠片を拾う
二人は寄り添い夢を見た
悲しみも争いも飢えもない
身も心も裸のまま
愛し愛される生活を

男がまたひとつ欠片を拾う
女も拾うまたひとつ欠片を
男は男のエデンを求めて
女は女のエデンを集めた
エデンは広い 二人の夢より遥かに
互いの欠片はいつまでも繋がらない

エデンを知る者は誰もいない
ただ夢見るだけ
素足で走り後を追う無邪気な二人
ひび割れた鏡から立ち上る仮象
男は自分の幻を追っていた
女は自分の幻に追われていた

完全だった楽園の
完成しないジグソー

誘惑と裏切りの地
呪いを受けて追放されて
貧しさと労働 病と死
男は現実の女と 女は現実の男と暮らした
今は遠いエデンを時折夢に見ながら
かつて二人は生き抜いた

エデンを夢見よ
豊穣なる実りを 神の恵みを想え
瑞々しい果実の香り
果実より尚甘く続く蜜月のままの愛を
そうして現実の中で擦り切れた心を
諦念の包帯でぐるぐる巻きにして

生きよ
かつての二人のように
エデンの欠片をポケットに入れたまま
死こそその門口と想えるまで
涙枯らした屍になるまで
苦しめよ 人よ 憧れ故に




               《エデンのジグソー:2018年6月2日》










自由詩 エデンのジグソー Copyright ただのみきや 2018-06-02 21:00:07縦
notebook Home 戻る  過去 未来