クラリネット
ヒヤシンス

 
 森の小径でだれかの影法師が泣いている。
 よそゆきの仮面を外し、裸の心が揺れている。
 曝け出す事を善しとするならば、
 私たちはだれにどこまで曝け出せば良いのだろう?

 露台の椅子に腰掛けて、だれかが途方に暮れている。
 私はあえて語らない。
 語り出す事を善しとするならば、
 私たちは何について語り始めれば良いのだろう?

 もうじき日が暮れる。
 夜の神秘に耳を澄ませば、
 行方知れずの魂が微笑むだろう。

 優しさを秘めた孤独の中に愛を見出せたなら。
 生きる事を許された私たちには未来があるのだ。
 夜の帳が下りる頃、木々の梢が静かに揺れる。

 


自由詩 クラリネット Copyright ヒヤシンス 2018-06-02 05:33:32
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