塔と鐘
ヒヤシンス


 青く澄み渡る空の下、高原の塔の前に立つ。
 息を吸い込むたびに体が宙に浮いてゆく。
 時代を遡るかのように。
 過去を愛せるようになればきっと未来も明るくなるだろう。

 ラベンダーを腕一杯に抱えた女の子は私の祖母かもしれない。
 空の彼方から私を呼ぶ声が聞こえる。
 大地と宇宙の境目に私は立っているのだ。
 爽やかに降り注ぐ日光に優しく包まれる初夏の午後。

 私の努力は報われる日を待っている。
 永遠に流れる時の中で静かに待つのも良いだろう。
 そうして私は努力を重ねる。

 いつしか高原に寝そべりながら私は耳を澄ませている。
 遥か昔に建てられた塔の前では自然の音色すら心地良い。
 眼下に広がる雲海の中から遠く美術館の鐘が鳴る。 
 


自由詩 塔と鐘 Copyright ヒヤシンス 2018-05-26 04:58:44
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