ミナト 螢

プレゼントだと言って渡された
腕時計なのに喜べなくて

剥き出しのままの安っぽい身体
素敵な箱やリボンの仕掛けで
誰かの笑顔を誘えるような
贅沢な人生じゃなかったね

両親が高いと嫌う時計を
分割払いで手に入れました

値段に0が泳ぐ海岸で
防水と知っていても心配な
左手首の重みが罪深い

両親が他界する前にわたし
時計のお礼も言わずに泣いた
少しでも豊かさを感じたくて
お金を使ってみたけど駄目さ

電池交換の代金の方が
本体よりも高くなるけれど
今はこの安っぽい腕時計が
全てを失くしたわたしには似合う


自由詩Copyright ミナト 螢 2018-05-25 20:13:39
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