広瀬川のほとり
服部 剛

この古びた階段を登ってゆけば
あの宙空が待つだろう

   *

何処までも細く真っすぐな緑色の道
私がどんな哀しみにゆがんでも
あの空は
この胸に結んだ
ひとすじの糸を、手繰たぐるだろう

   *

柳よ、何故そんなにも風に身を揺らすのか
川よ、何故小さな流れの渦は
この胸奥きょうおう
血管を――巡るのか

   *

背丈の高い木が、無言で歓ぶ
密やかな午後と
遠い町の喧騒

   *

私はまだ知らない
ほんものの陽が
いともか弱い、自らの影を
くっきり立たせていると

   *

今日も水車は
からから…廻り
川の飛沫しぶきは頬に、跳ね
私の中も廻り始める

   *

空に白い月が膨らみかける
午後
土蔵の暗がりに入ると
朔太郎の澄んだ宇宙の瞳と
目が合った  









自由詩 広瀬川のほとり Copyright 服部 剛 2018-05-24 22:19:40縦
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