うみがたり
ミナト 螢

夕日が震えながら沈む海で
光を貰った両眼の奥に
寄せては返す波の音が届き
溜め息やくしゃみで塗り替えてゆく

静寂が似合うと思えるのは
花火のゴミを燃やした時に出る
煙のせいで涙が滲んでも
誰も見ていなくて安心できるから

水面をくぐらせたハンカチは
どうして赤く染まらないのだろう?
腹を割るように血を流したのに
海は全てを透明に還す

入口か出口かさえも分からず
漂ってしまうサンダルを脱いで
海に浮かべれば白い船になり
石を投げれば幾つ跳ねるかな?

三日月が僕にウインクをして
グレープフルーツジュースを注ぐ
しょっぱい味だけが残った海は
本当はピンク色だったのかもね


自由詩 うみがたり Copyright ミナト 螢 2018-05-20 16:29:40
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