楽園
尾田和彦



うっすらと浮かんだ額の汗に
太陽と雲が逆さに映りこんだ
霧島から噴煙が上がっている
牛たちは
寝そべったり
エサを食べたり
思い思いに過ごしている

鴉に啄まれた
タヌキの死骸が
草むらから顔を出している
内臓がすっかり無くなり
皮だけになったタヌキ

俺たちは
人生を形容する言葉を探していた
無抵抗なもの
それは人間だ
夏がそこまで来ている
雑草の太い茎
根っこ
土くれが緑色に覆われた
牛舎の熱気

ここは歴史から脱出する場所だ
名もない犬が一呼吸
空気を吸い込む

犬の中に広がった空

地球の丸い形
尖がった山の頂点
全ての形に存在が宿る
未来は原っぱに転がった影だ
俺たちが悔やんだ
過去だ



自由詩 楽園 Copyright 尾田和彦 2018-05-20 12:49:52
notebook Home 戻る  過去 未来