デッサン
ミナト 螢

君の声が届かなくなってから
ありふれた愛の言葉を避けて
世界を逃げ回るよりも僕は
耳のない自画像を描いたよ

アンテナが折れたテレビのように
白黒の雨が身体を濡らし
全てを閉ざした心もいつかは
優しい輪郭をなぞるだろうか?

大きなキャンバスの前で仕上げた
君の少し怖い目つきを見ると
穏やかな形に直したくなる
何か不安なことでもあるのかい?

潰してしまった耳の代わりに
君を思う時は尻尾を振ろう

狂ったデッサンが僕を励まし
人間の姿を忘れても良い


自由詩 デッサン Copyright ミナト 螢 2018-05-20 09:19:38
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