まあちゃん
葉山美玖

ハチ公の前でまあちゃんと会った
まあちゃんは切れ長の目をしていて
虫眼鏡みたいなメガネをかけた旦那さんと
女の子の赤ちゃんを連れていた
まあちゃんのワイドパンツはゆったりしていて
初夏の風にひらひら揺れた
一生懸命次から次へと喋る私に
まあちゃんはにこっとして
「もうちょっとゆっくり」と言った
つばめグリルの真ん丸のトマトを
口いっぱいにほうばりながら
まあちゃんは泣き出しそうな娘さんを
よしよしとあやした
旦那さんは気が強そうで
働いてない私はちょっと気後れした
まあちゃんと出会ってからの私は
全然男の人を追っかけなくなっていた
代わりに電車で三駅の作業所で
リバティプリントのきれっぱしで
お人形を作るようになっていた
帰り道でまあちゃんが
買ってくれた本の代金千円が
私にも価値があると言っているようだった
男の人は結局私を救わなかった
みんなもっと甘え上手の女性になびいていった
まあちゃんは可愛くて
私とは違ってて
一旦私はひがんでへこんだけれども
まあちゃんは私の詩が素敵だと言った
私はもう背中をまるめないで
一人きりのマンションに真っすぐに歩いて行った
まあちゃんに似たお人形を明日作ろう


自由詩 まあちゃん Copyright 葉山美玖 2018-05-16 19:05:07縦
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