寂しい森
こたきひろし

とっくに死んでいる筈なのに昨夜は遅くお袋が会いに来てくれた
何年ぶりだろ すっかり忘れてしまった
お袋はどこの誰かわからない位にすっかり若返っていた
だけど親と子だから肌で感じとった
つい懐かしくなってお袋の乳房に触ったら冷たくなっていた
お袋は言った「男に触られたのはあんたが初めてよ」
お袋は正真正銘の処女に戻ってしまったらしい

それで俺は聞いてみた「親父はどうした?」
するとお袋は「知らない。まだ出会ってないから」
正直言ったら親父の事なんてどうでもい俺だった
いやどうでもよくはない、親父がいないと俺が消えちまうだろ
酒好きで浴びるように飲んだら暴れて暴力
それでも幾らかは良いところがあったのかな

なんやかんやと時間は過ぎた お袋があっちに帰ると言い出した
それで名残惜しいが俺は言った「今度来るときは親父といっしょに来てよ」
すると若返っていたお袋は言ったのだ「あっちは自由恋愛のとっかえひっかえや」

処女とは思えない言葉を口にした
「そうか」と俺は気のない返事をした


自由詩 寂しい森 Copyright こたきひろし 2018-05-16 05:23:31
notebook Home 戻る  過去 未来