蛇に
こたきひろし

俺は一匹の蛇だった 蛇に産まれる前は一人の人間であったかもしれない
そんな事を思いながら 俺は田んぼと田んぼの間の細い道端の草むらにに潜んでいた
その時福寿さんが歩いてきた 福寿さんは近辺の農夫 妻も子供もいた
俺は一匹のマムシ この辺りではクチハビと呼ばれて恐れられていた
毒蛇だからね 猛毒持っているからさ
それにしても、福寿とはいい名前だな おめでたい名前だ
田んぼには時節柄水が張られ一面稲が植わってたからな
福寿さんはそれを見にきた訳さ 福寿さんが草むらに足を踏み入れた時
俺は胴体を踏まれた
それで
反射的にそして反社会的に俺は福寿さんの足を噛んでしまった
俺は前世は人間だったのかもしれないのに
福寿さんの足を噛んでしまった
全ては手遅れ 猛毒は福寿さんの足から全身に回っていった

それにしても福寿なんて名前 ちっとも福寿じゃ無くなっちまったな
結果論だけど


自由詩 蛇に Copyright こたきひろし 2018-05-13 18:26:09
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