ブラックサンタクロース協会
尾田和彦




俺は今年サンタクロースになるつもりでいる
誰も止めんでくれ
いま
煙突という煙突をリサーチ中だ
まぁ
俺の配達範囲といったら
限られちゃーいるがな

配達?
サンタクロースといっても
ボランティアではない
報酬はきっちりと頂く
俺はね
労働者なんだ

ブラック・サンタクロース協会といっても
中身は決してブラックじゃない
労働時間はきっちり8時間
週休2日制だ
残業は基本なし
日給月給制で
有給もちゃんとある

サンタクロースに上司はいない
トナカイという執事が
パソコンの代わりに支給される
橇(ソリ)は持ち込み可だ
外資系なんでね
会社に出勤する義務はない

しかし俺はいま
途方にくれている
肝心のプレゼントが
ブラック・サンタクロース協会から
届かないのだ
はっきりいって
クソだ

プレゼントはむろん
受注生産だ
世界中の無垢なガキんちゃどもが
バカ親に騙され
欲しいものをサンタクロースにおねだりする
ばかばかしい
サンタクロースをなんだと思ってるんだ
奴隷かぁ
運び屋か?
ヤクの売人じゃあるまいし
しかも近頃ガキんちょといえば
なんだ?
やたらと夢見がちな玩具を欲しがる

俺が子供頃には
考えられなかった・・
ある埼玉のガキは
ピンクのゾウを欲しがった
そんなもの
どこにも売っちゃいない

俺も昔
一晩中
新横浜プリンスホテルのスイートルームで激しく女を抱いたとき
明け方
クラっと一瞬 網膜の裏側に
ピンクのゾウを見たことがあるが
それはオトナの見る幻覚というやつだ

埼玉のあきお君
10歳
碌な大人にならんぞ

ところで俺は頼子ちゃんという12歳の女の子の家に
いま下見に来ている
まさか12でサンクロースとは・・
どういう親の教育をしているんだ
このままでは頼子ちゃんは
現実と妄想の世界を区別できない大人になってしまう
明らかに
犯罪者予備軍だ

俺はなんとかしたい
サンタクロースのプライドにかけて
頼子ちゃんを救うのだ
諸君
俺はロリコンではない
ちゃんとした42歳だ
派遣のサンタクロースじゃないぞ
正社員だ

ところで
サンタクロースの仕事は
俺の性に合わないと感じ始めている
まだ本番の
クリスマスの当日を迎える前に
この様だ
まったく俺ときたら
毎日トナカイと喧嘩ばかり
昨日はエサの量が少ないといってきた
いったい
一日何キロのエサがいるんだ!?
ブラック・サンタクロース協会の山田さんは
こう言っていた
トナカイによって違うそうだ

毎日ノイローゼになりそうだ
この分じゃ
クリスマスを迎える前に過労死し
新聞の一面を飾りそうだ
サンタクロース42歳
過労死認定

これじゃ
頼子ちゃんを犯罪者予備軍から救うどころか
俺の短かったセミのような一生が
トナカイたちのパワハラによって閉じられようとしている
サンタクロース
サンタクロース
嗚呼 サンタクロース
君の存在はなんてブラックなんだ
そしてなんて
なんて哀れなんだ
子供たちに夢を運ぶ前に
自分の命を大切にしてくれよサンタクロース



自由詩 ブラックサンタクロース協会 Copyright 尾田和彦 2018-05-11 20:43:40
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