冬と喪心
木立 悟






針ひとつ氷の辺に立ちつくす



夕暮れに黒の交わる底翳かな



ひたひたと夢の終わりに生える藤



凍る夜と凍らぬ月の影ふたつ



断崖は枯れた蕾の街に咲く



黒よりも深き黒にて黒を喰む



六十夜七十夜まだ春を見ず



水底に空の針刺す皐月かな



けだものの咽に囁く洞月夜



鏡らが鏡を孕む黄道軌



棘に咲く光つらぬき駆ける笑み



白蛇に鉱と穂と羽ふりやまず



懐の十尾のけもの冬を咬む



























俳句 冬と喪心 Copyright 木立 悟 2018-05-09 23:43:14縦
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