空に落ちていけたら
こたきひろし

イオンモールのなかにある書店で休日のいっときを過ごした
私が読みたい本はこれといってなかったけれど
店内に並べられていた本を手当たり次第とってはペラペラと捲って元に戻した
昼下がり。店内は日曜だけあってそれなり客は入っていた
「失礼かも知れませんけど、もしかしてこたきさん?」
いつの間にか私の側に自分と同じ位の女性が近づいていた「間違ってたらごめんなさい」
「こたきですけど」と答えると私はその人の顔を見た
清楚な服装の綺麗な女性だった、けれど顔に記憶はなかった
「どなたでしょ?」私は訊いてみた
「名前はありません」
その思いがけない返答に「はぁ?」と私は反応した
それで私は「名前のない人が私を知ってるってどう言うことですか?」
すると彼女は顔色ひとつ変えないで言った「貴方の御持ちの遺伝子を頂きに参りました」
それで私は思った 綺麗な顔して気の毒に頭イカれてる、と
だけど、彼女に訊いた「どうやって?」
すると彼女は照れながら言った「こたきさんご存じでしょ」と顔を赤らめなから体をグッと寄せてきた
それで私は思わず言ってしまった
「俺でいいんですか」そしたら彼女は首を縦に降った
首を降ったのだ


自由詩 空に落ちていけたら Copyright こたきひろし 2018-05-06 01:37:11
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